「笑い」の健康に対する効果と効能(2)

前回に引き続き、笑いの心身の健康に対する効果と効能について取り上げていきます。

「笑い」はストレスに効く

笑うことで心身のストレスが軽減するという実験結果が得られています。

これは、2002年に大阪府立健康科学センターが主催で行った研究で、落語を鑑賞する前と鑑賞した後で、唾液中のコルチゾールの値を比較したものとなります。

このコルチゾールは、心身にストレスがかかってくると分泌されるという性質のあるホルモン物質で、ストレスホルモンといわれることもあります。

実験の結果、落語の鑑賞前と鑑賞後では、3/4の被験者のコルチゾールの値が低下していたということが判明しました。

人間は大きく笑うとスッキリする感覚がありますが、これも実際に身体に変化を起こさせていることが医学的に立証ているのです。

「笑い」はアトピー性皮膚炎に効く

また、笑いはアレルギー反応を抑制するという研究結果も得られています。

この実験でもっとも有名なものは、守口敬任会病院の木俣肇アレルギー科部長(当時)が2001年に発表した論文の中で明らかにされたことです。

木俣医師は、アトピー性皮膚炎の専門医で、アトピー性皮膚炎の患者の協力の下、コメディ映画を鑑賞する前と鑑賞した後で、アレルギー反応を引き起こす物質である「IgE抗体」が減少したとのことです。

アトピー性皮膚炎については、正しい方針の下で適切な治療を続けることが大前提となるため、笑い単に笑っていればそれだけで治るわけではありませんが、その症状を軽減する際に笑いが大きな役割を果たすということは木俣医師自身によって指摘されています。

「笑い」は脳の活性化に効く

人間の笑いは、刺激に対する脳の反応ですので、もしかしたら脳の機能にも影響があるのかもしれません。

まさに、このような疑問に答える研究がすでに行われています。

これは、中央群馬脳神経外科病院理事長である中島英雄先生が実施した実験です。

すでに亡くなられましたが、中島先生ご自身も桂前治という名前でプロの落語家としても活躍されており、同病院の「病院寄席」において脳疾患の患者さんの落語の鑑賞前後の脳の血流量を調べたという実験です。

すると、落語を見た後では、64%の患者さんの脳の血流量が増加していました(減少した人は23%)。

なお、この「笑い」によって脳が活性化されるというのは、超高齢社会を迎えた日本にとって大変な福音であるように私は捉えています。

特に、最近では、高齢者の認知症が社会的な問題となってきており、「笑い」が脳の血流量を活性化させるならば、超高齢社会の進展とともにやってくる認知症社会において、それは有効な処方箋となることが期待されています。