「笑い」のデータを健康長寿に役立てる

現在、日本は「超高齢社会」のただ中にあります。

超高齢社会とは、社会の中で65歳以上の高齢者が21%、すなわちおよそ5人に1人が高齢者という状況であり、今後の日本ではそれがさらに進んでいくことが確実視されています。

すでにマス・メディア等で報道されているように、このまま社会が高齢化していくと、介護の必要性の増大や認知症の発症率の増加、高齢者による自動車事故の発生など、社会全体がリスク化していくことが予想されます。

このような話を見聞きすると、私たちは日本の将来があまり明るくないというように感じてしまいます。

しかし、このような状況だからこそ、私は「笑い」とその数量的なデータが今後の超高齢社会を支える重要な役割を果たしていくと考えているのです。

超高齢社会における「笑い」の意義

社会が高齢化する中でもっとも大きな課題となるのは、高齢者の心身の健康をどのように維持していくかということです。

今後、人間が長く生きることが普通になったとしても、その行き着く先がベッドで寝たきりの生活であったり、認知症などで身の回りのことが自分でできなくなったりすることであるならば、それは幸せに生きることからは離れていってしまいます。

そのため、現在では高齢者が健康的に生活できる「健康寿命」をどのように延ばしていけるのかが喫緊の課題になっているわけです。

この課題を解決するための一助として、私は「笑い」のチカラが活用できるのではないかと考えています。

本サイトでも何度も触れているように、「笑い」が心身の健康に対して良い効果や影響があることはすでに実証されています。

まず、笑いは「アッハッハ」という声や腹を使った身体運動という側面があり、これまでの研究結果からは「大笑い」を10~15分間行った際のエネルギー消費量は軽い筋肉運動以上にもおよぶことが分かっています。

つまり、日々の生活の中で大きく笑うことを実践するだけで、たとえ身体を動かさなくても運動量が確保できるということになるのです。

また、笑いは私たち人間が何らかの出来事や物事を見聞きする、すなわち認知的な刺激から発生するという側面も持ち合わせています。

たとえば、あなたが一日のうちで「どれくらい笑っていたか」を見ることによって、あなたが一日のうちに「どれくらいの刺激を受けてそれに対して笑いというポジティブな反応をしていたのか」を知ることができます。

つまり、ある人が「どれくらい笑っていたか」は、その人が「どれくらい精神的にポジティブな状態で生活していたか」を推し量るためのバロメーターとなるのです。

以上のように、「笑い」は人間のココロとカラダの両方に対して刺激を与えるとてもすぐれた身体運動であることから、それを積極的に活用していくことで心身ともに健康的な生活を実現することができるのです。

「笑い」のデータを世界に向けて発信する

日本社会の高齢化は、実は「世界でも類を見ない」と評されるほどに世界に先駆けて進んでいます。

これはすなわち、日本は社会の高齢化という点において世界各国に比べてかなり先を歩いているということになります。

社会の高齢化そのものはネガティブに捉えられがちですが、これを逆に考えれば、この社会の高齢化という課題に対して日本が何らかの解決策や方策を見出すことができれば、その知見を後進の世界各国に対して日本独自のものとして発信できることができます。

これについて、私は「笑い」の実践とその客観的・数量的な大規模データがその役割を担うと考えています。

笑いが心身の健康に対して良い効果・影響があることは実証されていますが、実はその具体的な程度問題や対応関係についてはいまだにあいまいな部分が数多く残されています。

というのも、「笑い」と「健康」との対応関係を考えた場合、後者の健康については、血圧、血糖値、NK細胞、運動量、血液検査など、すでにさまざまな健康指標が用いられており、私たちは健康診断などを通じて自分がどれくらい健康な状態であるのかを客観的な数値データから知ることができます。

それに対して、もう一方の「笑い」については、これまで客観的・数値的なデータとして測定するための装置や技術がなかったため、笑いと健康との対応関係を詳細に実証しようとしてもそれができない状況が続いていたのです。

そのため、「どれくらい笑えば、どれくらい健康になれるのか」については、これからの「笑い」のデータを蓄積しながら研究することで明らかとなるものなのです。

しかし、現在、人間の笑いを客観的・数量的に計測する「笑い測定機」を開発したことにより、笑いのデータを取得することが可能になりました。

もし、今後増え続けていく高齢者の笑いのデータを収集していき、それと健康指標との対応関係の詳細を明らかにすることができれば、高齢者の心身を健康に保つことを実現しながら笑いを活用して健康になるための知見とそれを裏付ける笑いの大規模データを蓄積することにつながります。

そのようにして蓄積された笑いの実践に関する経験とその大規模データは、やがて世界各国において来るべき社会の超高齢化に対して、いわば日本が超高齢社会の先輩という立場で日本独自の処方箋として世界に発信できる非常に重要な知見となる展望を拓くことができるのです。