「笑い」の波形の解析アルゴリズム

私たち人間は、通常、誰かが笑っているのを見聞きすると「その人は笑っている」と感じますし、笑っていなければ「その人は笑っていない」という風に当たり前のように認識しています。

私が「笑い」を測定する「笑い測定機」を開発する中でもっとも難しいと感じていたのは、この人間が無意識に行っている笑いの判別方法を考案してそれを機械に覚えてもらうことでした。

私がもともと文系の人間であったこともあり、この笑いを判別するための計算方法(=アルゴリズム)を考えつくためには実に5年以上にわたる歳月が必要だったのですが、今回は機械で人間の笑いを判別するための方法についてご紹介していきます。

「横隔膜式笑い測定機」に見る「笑い」の波形

私たち人間は、ある人が「笑っている」のか、それとも「笑っていない」のかをどのような手がかりで判断しているのでしょうか。

結論からいえば、「顔」(笑顔)、「喉」(笑い声)、「腹」(横隔膜)の3つの部位に動きがあるかどうかということになります。

このうち、私が開発していたのは3つ目の「腹」の動きを測定する「横隔膜式笑い測定機」です。

「腹を抱えて笑う」という言葉があるように、人間が「面白い」という感情を抱いたときに発生する笑いは、お腹の部分(より正確には横隔膜)にその反応があらわれます。

横隔膜式笑い測定機は、その反応を「筋電計」という筋肉の動きを検出する装置を用いて測定しようというものです。

横隔膜式笑い測定機の詳細については、こちらの「横隔膜笑い測定機」の特徴のページをご覧ください。

さて、この笑い測定機を使うと、人間が笑ったときの腹部の動きは次のような波形としてあらわされます。

上の図は、人間が笑ったときの腹部の動きを筋電計で捉えたそのままの波形で、2箇所の部分に「笑い」が記録されています。

しかし、それと同時に、「笑い」以外にも「心拍」の波形の突出が一定間隔で混入してしまっています。

横隔膜は心臓に近い部分にあるためにこのような心拍の波形が入ってしまうのですが、ここから笑いのみを選択して取り出すためにはこの波形に対して波形変換を行って単純化する必要があります。

「笑い」の波形を変換・解析する

筋電計に記録された心拍を波形解析すると、おおよそ20~40Hzにその特徴があらわれます。

そのため、まず、上に示した波形に40Hzのハイパスフィルタを適用し、波形に含まれる40Hz以下の成分をカットすることで心拍の波形を低減することができます。

次に、筋電計の波形にはプラス(上部)とマイナス(下部)の部分が記録されていますが、波形をより単純化するために下側のマイナスの部分をすべてプラス側に折り返す「全波整流」の処理を行います。

最後に、波形全体のおおよその外形を取得するため、6Hzのローパスフィルタを適用し、6Hz以上の波形の成分を低減させます。

これら3つの手順を経て波形を変換することによって、以下の図のような笑いの部分のみが強調された判別しやすい波形を取得することができます。

図を見ると分かるように、複雑な波形が単純化されて笑いの特徴が捉えやすくなっています。

前半の笑いの部分を見てみると5つの波形のピークが突出しており、後半の笑いでは波形のピークの突出が4つあることが分かります。

腹部の笑いは「アッハッハ」という笑い声とも連動していることが多く、これはつまり前半の笑いでは「アッハッハッハッハ」という5回の笑い声をあげていたことが分かり、後半では「アッハッハッハ」という4回の笑い声をあげたていたということになるわけです。

以上のように、笑いの波形のピークの数をカウントすることで、人間の「笑い」を客観的・数量的に捉えることが可能となるのです。

コンテンツ・メニュー
「笑うヒト」になろう!
「笑い」と健康
「笑い」とコミュニケーション
「笑い」とユーモア
「笑い」の理論
「笑い」を測定する
サービスメニュー
「笑い」の測定機 
「笑い」の日記帳 
「笑い」のスケジュール帳
運営者情報
管理者:板村 英典
インフォメーション
当サイトご利用上の注意
「笑い」の日記帳 取扱サイト