研究論文・雑誌論文の見つけ方――検索システムの活用

前項では、主に研究を目的とした大学の図書館の基本的な使い方を解説しました。

ただ、大学院の研究において先行研究に言及する場合、書店で刊行されている本や書籍を参照することもありますが、より専門的な学術雑誌に掲載されている論文を探すことの方が多いといえます。

今回は、みずからの研究テーマに関わるこのような論文の探し方についてご紹介していくことにしましょう。

論文を参照する理由

大学卒業時に提出する卒業論文を執筆した人であれば、おそらく研究テーマに関連する本や書籍を参照した経験があると思います。

ただ、大学院で行われる研究の場合、卒業論文に比べてより専門的かつ最新の情報を手に入れる必要があるため、本や書籍よりも雑誌や学会に投稿された論文を参照することの方が多くなります。

一般に、専門書や研究書といわれる書籍はその著者が一冊の内容をすべて書き下ろすこともありますが、実は多くの場合はそれまでにその研究者が投稿・発表したいくつかの論文をまとめて一冊の本にしています。

そのため、書籍にまとめられた著書というものは、刊行された段階では最新の情報でないことがほとんどなのです。

すでに触れたように、研究とは自分が見出した新たな事実や発見を公表していくものですので、せっかく自分が発見したと思ったものがすでに他の人によって発表されていたのであれば、それを公表することの意味はなくなってしまいます。

自分の研究テーマに関してできるだけ多くの情報を参照する際に、古い情報よりもできるだけ新しいものが必要となる背景にはこのような事情があるわけです。

さて、私たちが本や書籍を検索しようとする場合、たとえばAmazonなどのインターネット上のサイトで本のタイトルや著者の名前を入力して検索すれば簡単に見つけることが可能です。

これと同様のことを図書館の検索用のパソコンで行えば、自分の欲しい本や書籍を探せることは分かって頂けると思います。

しかし、学術雑誌の中に収録・掲載されている「論文」あるいは「記事」「コラム」などは、大学の図書館ではどのようにして探せばよいのでしょうか?

これは実際にやってみればすぐに分かるのですが、インターネットを使って学会の学術雑誌の中に収録・掲載されている論文のタイトルや著者の名前を入力して検索してみても、それにたどりつくことはなかなか難しいのです。

そのため、大学の図書館において学術論文や記事などを探して見つけるためには、それ専用の方法を知る必要があるのです。

「雑誌記事・論文検索システム」の活用

学会の雑誌や研究書、その他言論雑誌の中に収録されている論文を探す方法について結論を先にいえば、それ専用の検索システムというものが存在していますので、それを活用することになります。

具体的には、「Cinii」(サイニィ)や「MAGAZINE PLUS」(マガジンプラス)というものが代表的な雑誌記事・論文検索システムです。

このうち、Ciniiはインターネット上で稼働するシステムなので、こちらのCiniiのページから誰でも無料で使うことができます。

それに対して、MAGAZINE PLUSは大学の図書館にその検索システムが導入されている場合、それを使用することができます。

こちらはさまざまな雑誌記事、たとえば『週刊朝日』や『サンデー毎日』などの週刊誌、『文藝春秋』や『世界』といった月刊誌などに掲載されている論文や記事を検索することができます。

実際の検索の方法としては、まず、これらの検索システムの検索ボックス欄に自分の研究テーマに関連するキーワードを入力して検索します。

そうすると、そのキーワードに該当する雑誌記事や論文の情報が検索結果に表示されます。

以下の図は、雑誌検索の一例として、Ciniiのサイトを使って私の名前の「板村」と「笑い」というキーワードで実際に文献を探したときの検索結果です。

検索のキーワードに該当する論文のタイトルと書誌情報が掲載されます。

その情報の中には、該当する記事や論文のタイトルとそれが収録されている雑誌や研究誌の名称、著者名、発行年、その雑誌の号数および該当するページ数、出版社や発行元などが含まれています。

これらヒットした情報の中から、自分の研究テーマに関連しそうなタイトルの記事や論文を探し出し、その雑誌の書誌情報をメモに書いて控えます。

ここまできたら、雑誌記事・論文検索システムの出番はここで終了となります。

次に、図書館の検索システムを使って、その記事が含まれている雑誌や研究誌の所蔵を調べます。

研究雑誌で出版された年がある程度古いものになってくると地下の書庫に配架されていますので、そこから書庫の中にある雑誌や研究誌の年と巻・号などを手がかりに該当するものを探し出します。

そこで先程メモをした情報から雑誌記事や論文を探せば、そこにたどりつくことができるわけです。

あとは、その雑誌記事や論文が自分にとって必要なものかどうかを判別し、コピーを取りたい場合はコピーをしてから持ち帰るということになります。

雑誌や研究誌がない場合は

大学の図書館の規模にもよりますが、自分の手に入れたい雑誌や研究誌が図書館に所蔵されていない場合があります。

その場合には、「レファレンスカウンター」という図書館のサービスを利用することで、料金はかかりますがその論文を他の大学や研究施設から取り寄せてもらうことができます。

以上のように、大学の図書館では先行研究を調べる上で大変有用なシステムが多数存在しています。

自分の研究テーマに関連する先行研究を調べ上げることによって、自分の研究の立ち位置を明確にしたり意義を見出したりすることができます。

みずからの研究スキルを向上させるためにも、文献を検索するためのスキルは持っておいて損はないといえるでしょう。