成長とともに「笑い」が少なくなる理由

人間の「笑い」というものは、私たちが年を重ねていくと自然と少なくなっていくことをあなたは知っているでしょうか?

実際、高齢者の笑いを調査した研究によると、70代の一日に笑う量はあきらかに減少しているという結果が出ています。

では、なぜ、年齢を重ねると笑うことが少なくなるのでしょうか?

「笑い」の原因は「驚き」

まず、「笑い」が発生するメカニズムについておさらいしておきましょう。

詳細はこちらのヒトはなぜ笑うのか?のページに譲りますが、笑いは「驚き」という感情がきっかけとなって発生します。

この驚きは、私たちが思いがけない状況に遭遇したときに生じる感情です。

私たち人間は、「次はこうくるかな?」と予想しているときに、それとはまったく違った刺激、あるいはまったく予想もしていなかった刺激が来た場合、驚いてしまいます。

しかし、自分の予想と似ていながらもそれとは少しだけ違った刺激、すなわち、自分の予想から少しズレた刺激が来ると、私たちは笑うのです。

というのも、私たち人間にとって、自分が予想したものと比べて「似ているけど違う」「違うけど似ている」という刺激に出会ってしまうと、頭の中がそれをどのように捉えればよいか分からなくなるために、混乱してしまうのです。

そこで、「笑い」という呼吸をともなった運動を行うことで一時的に思考停止状態にして、そこで頭の中の混乱に対してリセットをかけるのです。

その後、自分が見聞きしたその刺激を新しい出来事や物事のあり方として受け入れるということで、知識として吸収していくのです。

このように、笑いの背景にはその元となる驚きが必要となるわけです。

逆にいえば、笑いが少ないということは、その元となる驚きが少ないからといえるのです。

「驚き」が少なくなる理由

次に、突然ですが、自分の幼少のときのことを思い出してみましょう。

子どものときは、今に比べてたくさんの感情表現をしていたと思います。

なにしろ、自分の身の回りには見たことも聞いたこともないもので満ちあふれていて、それらに触れるたびに喜んだり笑ったり、ときには泣いたり怒ったりして身体全体でそれら自分の感情を表現していたわけです。

あらゆるものに対して感情のハードルが低かったといいってもいいでしょう。

しかし、大人になるにつれて、自分の感情をそのまま表に出すことは推奨されなくなりますし、そうすることがいわゆる「大人」であり「社会人」であるという常識を学習する形で私たちは成長していきます。

また、成長するにつれて、自分の見知ったことや経験した出来事や物事も増えていきますので、それらに対していちいち驚くことも少なくなってくるのです。

冒頭において、70歳以上になると一日に笑う量が低下するという調査結果を取り上げました。

生まれて70年も過ぎるようになれば、いい加減、経験済みの出来事や物事は増えてきますし、自分の行動の結果が最初に自分が予想したとおりになって外れなくなってくるので、驚きが生じにくい状況になってしまうのです。

「笑うこと」は「学ぶこと」

以上のように、日々の生活の中で「笑いを増やそう」と考えるのであれば、まずはいかに「驚き」を増やすことができるかが重要な要素となってきます。

毎日、何の刺激もない生活を送る中では、笑いそのものが生まれない状況に置かれているわけです。

今までに自分が見たことも聞いたこともない出来事や物事にこそ「驚き」が隠されており、それが「笑い」につながります。

笑いが生じたということは、それだけ自分が新しい出来事や物事に触れ、さまざまなことを学習していることになります。

いきなり「笑ってみよう」ではハードルが高く思われますので、まずは「驚いてみよう!」からスタートしてみると、案外、簡単に笑えるようになります。

私たち人間は、「驚き」≒「笑い」を通じてどこまでも成長することができるのです。