「笑い」の日記帳を「回想法」に活かして認知症予防

「笑い」の日記帳、通称「笑活日記」(わらかつにっき)は、もともと中高年の認知症の予防・対策を視野に考案されたワークシートが元になっています。

この日記帳では、認知症の予防・対策において有効とされる日記の要素と、認知機能の改善効果のある「回想法」(かいそうほう)という心理療法の2つが有機的に組み合わされています。

今回は、笑活日記を認知症の予防・対策で用いられている回想法に役立ていく方法についてご紹介します。

「回想法」(かいそうほう)とは

「回想法」とは、ロバート・バトラーというアメリカの精神科医によって考案された心理療法で、現在では主に認知症の予防・対策の現場に導入されている方法です。

認知症の方は、症状が進行していてもその人の過去の体験や昔の記憶については保持されていることが多いため、かつて自分が経験した懐かしい出来事を思い出したり、そのことを誰かに話したりすることで脳の活性化をうながします。

回想法の具体的な方法としては、認知症の方の世代にあった写真や映画、歌や音楽などに触れながら、当時のことやその時の思い出などをお互いに語り合う形で進めていきます。

回想法のポイントとしては、お互いが「思い出すこと」「話したり聞いたりすること」を通じてコミュニケーションをうながし、その結果として認知症の方の不安や孤独感を減少させたり、情動が活性化されるというところです。

「笑い」の日記帳の特徴

本サイトで無料で提供している「笑い」の日記帳では、一日を過ごす中で自分が笑った内容について、「どこで」「だれと」「どんなことで笑った」という項目に答える形で思い出しながら記入していきます。

通常、「笑い」は無意識の行動であるため「自分の笑った内容」はすぐに忘れてしまってなかなか思い出せないという厄介な特徴があります。

しかし、この日記帳では、「どこで」「だれと」という状況を手がかりとすることでその内容を「芋づる式」に思い出しやすくする工夫がされており、「どんなことで笑った?」という自分がその日に笑った内容が思い出しやすくなっています。

また、認知症予防にあたっては、手を動かしながらその日一日あったことを思い出す日記の効用がすでに認められており、実際の認知症予防の治療の現場においても日記が導入されています。

そのため、自分にとってその日を過ごす中で笑った出来事を思い出すという作業を通じて認知機能の活性化が可能となるのです。

この日記帳の詳細については、こちらの「笑い」の日記帳――「笑活日記」(わらかつにっき)のページをご覧ください。

「笑い」の日記帳を回想法に活用する

また、本サイトでは、この笑いの日記帳を回想法を実施する際に参加者同士のコミュニケーションの活性化を図るための題材として活用する方法をご提案しています。

当然のことですが、この笑いの日記には、それを書いた人の笑った経験や楽しい出来事が記入されていますので、その内容の詳細についてはそれを書いた本人にしか分かりません。

日記において「どこで」「だれと」「どんなことで笑った」というそれぞれの部分に書かれた内容は、他の人からは「この人は何かで笑ったのだろうけれど、その出来事の詳しい内容は分からない」といういわば一種のクイズや謎掛けのような形に見えるのです。

そこで、自分の書いた日記を他の人に見てもらい、その人が気になった出来事の内容を本人に聞いてもらうことを通してコミュニケーションの活性化を図るという使い方ができるようになります。

日記を書いた本人は、みずからが経験した笑ったことや楽しかった思い出しながらその内容を一所懸命に他の人に語ろうとします

また、それを聞く人は自分が気になった内容に耳を傾けるという、いわばクイズの答え合わせをするような形で話を聞くことになりますので、お互いが一種のゲーム感覚で楽しみながら会話を進めることができるのです。

自分も他人も一緒に楽しみながら笑った内容を思い出す回想法を通じて認知症予防にこの笑いの日記帳をご活用ください。