「笑い」があなたの生活習慣の課題を見つけ出す

現在、高齢者における認知症患者の数は増加の一途をたどっており、65歳以上の高齢者の実に4人に1人が認知症の予備軍といわれています。

高齢者の認知症に関する情報を収集していくと、必ずこのような話題が出てきます。

ところで、ここであなたに質問ですが、先に挙げた高齢者の認知症およびその予備軍の数を聞くと、「なぜこんなにも多いのか?」といった疑問を感じませんか?

私は正直、高齢者の4人に1人という数字を聞いたときに「昔は痴呆症というものがあったと聞くけれど、いくらなんでもここまで多くはなかったのではないか?」という感想を抱きました。

実は、この高齢者の認知症という問題には、私たちが生きる現在の社会における生活習慣のあり方が如実に反映されているのです。

今回は、現代社会と私たちの生活習慣を取り上げ、認知症予防に効果があるとされる「笑い」を手がかりとしてその対抗策を探ります。

高齢者の認知症が増加している背景

なぜ、現在の高齢者は4人に1人という割合で認知症の脅威にさらされることになったのでしょうか。

これには2つの原因があります。

ひとつは、昔と違って社会の長寿化・高齢化にともない、人口構成における高齢者の比率が明らかに高くなっているからです。

内閣府の報告によれば、2016年の段階で65歳以上の高齢者は3461万人で、全人口の27.3%にも上っています。

1985年の人口に占める高齢者の比率は10.3%となっていますので、昔に比べて高齢者が3倍近くにも増えているという現状があり、たとえ認知症になる比率が同じだとしても、長寿化による高齢者の母数の多さが認知症患者の数を増やすという結果につながるのです。

もうひとつは、私たちが現在生きている合理的な社会とその生活習慣の影響です。

現代社会を振り返ってみると、私たちの身の回りにはさまざまなサービスが満ち溢れており、私たちは貨幣を媒介とすることでそれらをすぐに利用できる大変便利な世の中となっています。

これはつまり、社会の合理化が進むにつれて私たちの生活の中にもともとあった「面倒くさいこと」や「難しいこと」がサービスとして置き換えられていっていることを意味しています。

では、このような社会の合理化が進むと、私たちの生活はどのようになってしまうのでしょうか。

たとえば、あなたは次のような話を聞いたことはありませんか。

ある高齢者が足を怪我して病院に入院しているうちに外に出歩くことがなくなってしまい、そのうちに認知症になってしまったという話です。

これは高齢者の認知症を考える上で非常に示唆に富む話で、結局、私たち人間の持っている能力はそれを使わなければそのまま衰えていってしまうということなのです。

社会の合理化やサービスの普及は、一見するととても良いことのように思えるのですが、以上のように考えていくと、このままではやがて誰もが何もできない社会が到来します。

つまり、高齢者の認知症という問題は、私たちの合理的な社会の行き着く先を象徴しているといえるのです。

「笑い」から生活習慣を見直して脳に刺激を与える

社会の合理化が進むことによって私たち人間は自分たちの生活の中で生じる「面倒くさいこと」「難しいこと」をできるだけ回避するような生活習慣を身につけることになり、それはやがて認知症発症の背景につながってきます。

これを逆にいうと、認知症を予防していくためには、面倒くさいことを人任せにせず、自分の心身を使ってできるだけそれを引き受けるような生活習慣を身に着けるということになります。

考えてみれば、今ほど社会が合理化が進んでいなかった昔は、サービスがそこまで進んでいなかったことから、あらゆることを自分たちで引き受けてやっていたため、それが結果的にそのまま認知症や痴呆症といわれるものの防止につながっていたと考えることができます。

本サイトでは、あなたの日々の「笑い」を笑い測定機を使って把握したり、「笑いの日記帳」のようなワークシートを用いて記録しながら振り返ることを通じて、それを認知症予防に活かす取り組みをご紹介しています。

笑いはある刺激に対する人間の無意識の反応ですので、毎日の生活の中でどれくらい笑いが生じていたかは、あなたがどれくらいの刺激を受けていて、それにどれくらい笑いという反応をしていたのかを知るためのバロメーターとなります。

そのため、「自分が一日のうちにどれくらい笑っていたのか」を振り返ってみることで、もし、それが少ないと感じるようであれば、より多くの刺激を受けられるような場所に出向くことを考えたり、よりポジティブな感情になれる方法を検討したりすることができるようになるのです。

とはいえ、毎日の生活の中で生じた笑いについていちいち振り返ったり、わざわざ笑いを測定したりすることは、大変面倒なことだと思います。

しかし、その「面倒なこと」をみずからの生活習慣として取り入れることで、常に頭を使って考え続けて身体を使って笑うといった心身の健康にとって大変効果的な生活を送ることが可能となるのです。