「笑い」の波形から「作り笑い」を判別する
人間の「笑い」を測定する「笑い測定機」では、笑ったときに検出される「笑いの波形」を変換・解析することからそれを客観的・数量的に捉えることを可能としています。
この笑いの波形を詳しく観察してみると、実は人間が普通に「面白い」「おかしい」と感じたときに行われる「笑い」と、意図的に笑い声を上げたときの「作り笑い」を判別することができるのです。
今回は、「横隔膜式笑い測定機」で用いられている「笑い」の判別法(=アルゴリズム)を笑い声に応用したときにあらわれる「作り笑い」の特徴を見てみることにしましょう。
笑い声を上げたときの「笑い」の波形
まず、「アッハッハ」という笑い声を音声のマイクで拾ってみると、次のような「笑い」の波形を取得することができます。
上の図の色で示した領域では波形の突出が見られますが、どちらも笑ったときの「アッハッハッハ」という一連の笑い声が波形としてあらわされています。
また、この笑い声の波形の特徴としては、「笑い」の波形の解析アルゴリズムのページで紹介している腹部(横隔膜)の笑いの波形と比較してみると、そこに心拍が入っていないことが挙げられます。
そのため、この笑い声の波形から「笑い」のみを把握する際には、横隔膜で生じた笑いの波形を解析する際に行っていた「心拍を除去する」という手順を省略することができます。
以下の図は、笑い声の波形に対して、マイナス(下部)の部分波形をすべてプラス(上部)側に折り返す「全波整流」の処理を行い、さらに波形全体のおおよその外形を取得するため8Hzのローパスフィルタを適用したものです。
笑い声の波形に対してこのような処理を加えて単純化することによって、「アッハッハッハ」という笑い声が波形の突出として捉えやすくなるのです。
さらに、この笑い声のピークの間隔の違いに注目すると、私たちが「面白い」「おかしい」と感じて笑う通常の「笑い」と意図的に「アッハッハ」と声を上げて笑う「作り笑い」とを判別することができるようになります。
通常の「笑い」と「作り笑い」を判別する
私たち人間は笑い声を上げるときに「アッハッハ」という断続的な呼吸を行っていますが、実は通常の笑いとそうでない笑いによって、そのタイミングというものが異なっているのです。
以下の図は、「アッハッハ」という笑い声を自分の意思で意図的に出してもらった際に記録された笑いの波形です。
「アッハッハ」という笑い声のタイミングは、笑いの波形に表示されているピークとピークの間隔の違いであらわされます。
この図はいわゆる「作り笑い」になるのですが、図を見てみると通常の「笑い」に比べてたくさんのピークの突出があり、かなりギザギザしていることが分かります。
この波形のピーク同士の間隔を具体的な数値であらわすと、通常の「笑い」は0.2秒前後で「アッハッハ」と発声しているのに対して、いわゆる「作り笑い」ではおおよそ0.1秒前後のタイミングで笑い声を上げています。
つまり、作り笑いは、通常の笑いよりも「アッハッハ」と発声しているときの「ア」と「ハ」の間隔が短いということになり、このピーク間隔の違いを利用することで、通常の笑いといわゆる作り笑いとを判別することが可能となるのです。
私たちはある人が笑っているのを見聞きしたときに、無意識のうちにその人が本当に「面白い」「おかしい」と思って笑っているのかそうでないのかを判別していますが、実はそこには「アッハッハ」という声の上げ方のタイミングの違いというものが深く関係しているのです。
なお、本サイトでご紹介している笑い声測定機「アッハ・メーター」では、このような時間的な判別条件を取り入れてアプリケーションを構築していますが、通常の「笑い」しか反応しないようにすると笑い測定機にいくら笑いかけても笑いをカウントしてくれないため、「作り笑い」でもある程度反応するようにしています。