「笑い」が逆境を乗り越えるチカラとなる理由
私はこれまで人間にとっての「笑い」の意味やその効果についていろいろと研究をしてきました。
その中で、私がもっとも重要だと感じたのは、笑いやユーモアというものは逆境や困難を乗り越えるための力、すなわちサバイバルするための力として活用できるということです。
なぜ、笑いでそのような力が得られるといえるのでしょうか。
その答えは、笑いのメカニズムを解き明かすことから導き出すことができます。
「笑い」やユーモアが発生する条件
まず、笑いには人間の精神や肉体の緊張状態を緩和する効果があることが知られています。
これはたとえば、ある人が精神的・肉体的に大変な状態にあったとしても、笑いによってリラックスした状態を作り出すことができるということを意味しています。
次に、笑いはどういうときにどのようにして発生しているのか、すなわち笑いの原因は何かということです。
人間は普段さまざまな物事や出来事に接していますが、その中で自分がもともと予想していたものと違った結果が返ってくると、そこにズレが生じて頭の中が一瞬混乱してしまう状態になります。
実は、この混乱を解消するために、人間は「笑い」という身体動作を行うことで、頭の中の情報を整理しようとします。
このように、笑いが生じる背景には自分の予想したものとのズレが必要だということは大変重要なことなので、みなさんもよく覚えておいてください。
さて、「笑い」やユーモアで日々の生活を楽しもうとする人は、実は普段の生活の中で積極的に物事をズラして楽しむということを行っています。
たとえば、自分の目の前にある物事や出来事の中で、「もし、これを別のものに置き換えると、どうなるだろう?」や「これとこれを組み合わせると、こんな面白いことになるかもしれない!」などのように、普通ではありえない想定外の状況をあえて自分で想像したり考えたりすることを通して、それで笑いながら楽しむということを行っています。
このように物事をズラして楽しむことが一体何の役に立つのかということですが、普段からこのように予想外の状況に触れたりそれを自分で作り出して楽しむことを続けていることは、実は困難な状況に対する耐久力や克服力を養うことにつながっていくのです。
私たちの生きるこの世界と「笑い」との関係
ここでみなさんに考えてもらいたいのですが、そもそも私たちの生きているこの世の中というのは、いつもいつも自分の予想通りに、あるいは期待通りに物事が動くことの方が少ないです。
そのような自分の思い通りにならない状況のひとつひとつに対していちいち怒っていたり悲しんでいたりすると、人間の精神と肉体は持たなくなってしまいます。
このようなもともとどうしようもない状況において、想定外のズレを楽しむという笑いやユーモアは、人間が苦しい環境の中に置かれながらも自分の精神衛生上の安定を保つために獲得してきた人類の偉大な知恵だといえるのです。
笑いやユーモアは人間にとって何の役にも立たないと考えられがちなのですが、日常的にこういった物事のズレに慣れ親しんでいると頭が柔らかくなり、発想力やアイデア力が研ぎ澄まされてくることにつながります。
そうなると、いざというときの想定外のズレにも強くなり、困難な状況を笑い飛ばしてそれを乗り越える力が備わってきます。
これが笑いとユーモアの力を身につけていく最大のメリットなのです。
なお、かの文豪マーク・トウェインは、「天国にユーモアはない」という名言を残しています。
私たち人間は、厳しい現実に直面しながらもそこで生きていかなければならない運命にあります。
だからこそ、笑いとユーモアは人間に必要不可欠であり、常に求められ続けるのです。
あなたも日常の風景の中からズレを生み出して笑って楽しみながら「笑うヒト」を目指していきましょう。